大学卒業目前の2005年の冬は、別府で年賀状のアルバイトをしていました。
きっかけは、大学の友人つよしくん。
「東京で一人暮らしするんやろ? したら色々と物入りになってお金がかかるから、時間があればバイトして少しでも貯めとき。年賀状配達のアルバイト一緒にやろうや」
という、まるで父親のようなお声がけ。
配達バイトは記憶が正しければ30人〜40人程度。配達は9割がた男性で、私を含めて数人が女性アルバイトでした。
冬の別府は吹き下ろす風、雪(綺麗に積もるのではなくベチャ雪であることが多い)、雪の後の凍った路面、温泉地によくある急な勾配の坂……となかなか厳しい条件。
年賀状配達といっても1月1日からスタートするのではなく、12月半ばから配達を始めてあらかじめ慣れておく期間があります。
配達するのは、自分のなじみのある場所ではなく全く行ったことのない場所。
地図は一応渡されるものの配達順しか書いてないので、ここから道を外れてしまうと戻ってくるのもひと苦労となってしまいます。
当時はGoogleマップも無かったので、方向音痴の私はとにかく迷子になってしまうことが懸念材料でした。
……が、それ以前の問題。
私はスクーターにしか乗ったことがない。アルバイト初日、あまりにカブを上手に動かせないために居残り練習をするはめに。
駐車場をひとりでぐるぐるまわる練習をするのはかなり寂しかった……。
道に出たら出たで、急な勾配にさしかかるとカブの馬力があまり無いこともあり、転んでカブごと落下したり、カブを自分で立て直せなかったりと心身共にボロボロ。
カブごと転んで滑っていく瞬間に考えたのは「せっかく就職が決まったのに!」でした。
死ぬかと。
地面に自分の体が叩きつけられる感覚はじゅうぶん世紀末。
ようやく4日目あたりで慣れてきたように思います。
カブに慣れてくると、それまで付き添ってくれた配達員さんから離れてひとりで配達へ出ることになります。
(続く)